私の中で、密かに「来る来る詐欺」と呼んでいることがある。細かく説明しなくてもネーミングで分かると思うが、はいその通り「来る来る」言ってさっぱり来ないお客さんのことだ。
お店が暇な状態ならいいけど、忙しい週末のドタキャンはなかなか辛い。お客さんから「今から行くよ」と予約の連絡があると、私は時間と人数を確認して席を確保する。でも時間になってもお客さんは来ないと、いつ来るのか、それとも気が変わって来ないのか、はっきりしない状態でいつまで席を確保するか、悩むところだ。
常連さんのＭ氏が１度、連絡無くキャンセルしたことがあった。本人としては自分１人のキャンセルくらい、店側もそれほど困らないだろうと読んでいたらしいが、そうではない。「Ｍ氏が来るからと、カウンター席を空けておくために３人組を断ったのよ」と、後日の来店した際に告げると、「俺のせいで、ママに経済的損失があったわけか。すまなかった」と、いつになく神妙な顔で謝られた。経済的損失だなんて、まあ、その通りだけど言葉が大袈裟過ぎて笑ってしまった。
たった１度のキャンセルは、来る来る詐欺とは呼ばない。当店の来る来る詐欺、不動の１位は、なんと言ってもＫ氏だ。年に3・4回くらいしか来店しないのに、「後から行くかも。また連絡するね」という電話は月に１・2度掛かってくる。きちんとした予約じゃなく、また連絡するっていうところがミソなのだ。私はだんだんとＫ氏の「行くかも」発言に期待しなくなった。
ところが先日、珍しくＫ氏が予告通り本当に来店した。すると、Ｋ氏のお連れの方が、「こいつは、いつもいろんなお店に電話をして、後から行くかも〜なんて言ってるから、どっかのママさんに“来ないなら電話しなくていいですよ”って言われてるわけよ〜！」だって。なるほど、Ｋ氏の適当な感じは、私のお店に限ったわけじゃなかったのね。きっと、あちこちで来る来る詐欺みたいなことを言われてるんだろうな。
