接客の仕事は好きだし、私に向いているとも思う。それでもやはり仕事は仕事なので、閉店時には疲れ切ってしまっていることもある。しかしそれは、「今日はお客さんがたくさん来てくれたから疲れた」とか「少なかったからまだまだ元気!」という話とも限らない。
例えば5名様1組と、1名様5組では、同じ5人でも気の遣い方が全く違って、時間の流れるスピードも違ってくる。そしてもちろん疲れも違ってくる。5名組は、大げさに言えば放っておいても勝手に飲んで歌って楽しんでくれる。お酒と水と氷さえ切らさなければ、私は不要なのである。しかし1名様が5人いると、その全てのお客さんとマンツーマンだ。私がA氏としゃべっている時、A氏以外の残りの4人はそれぞれぽつねんとお酒を飲み、おつまみを食べ、暇を持て余しているのである。誰としゃべっていても、その他のお客さんの様子が気が気でない。
お客さんが気さくで外交的な人だと、同じカウンターに座ったのも何かの縁だとお隣同士で会話が始まるが、みんながみんなそんな人だとは限らない。また、店側の私がカウンターのお客さん同士を仲良くさせようと働きかけ過ぎると、「ママは自分が楽だからお客同士を会話させようとしている」と思われるのでNGだ。あくまでお客さん同士が自ら進んで話をするのを待つしかない。
天気の話、テレビの話、今の時期は忘年会の話や仕事納めの話、後は以前にそのお客さんと話題に登った話を思い出して会話を進めたりと、ニコニコ笑顔の下では猛烈に話題探しに頭を回転させている。話題を振って聞き役に回るのが私の役目。ずっとマンツーマンはなかなか大変なのだ。
さて、今宵はどんなお客さんが来てくれるかな?