先日、セルフの席で1人で飲んでいる若い男性客に話しかけられた。その時私は、お客さんのふりをしてカウンターに座って1人で飲んでいたのだが、なんだか話し掛けたそうな素振りのその人に背を向けて、気が付かない振りをしていた。話したがりの人の話はあまり聞きたくないのだ。でも、その男性客はわざわざ身を乗り出して私に話し掛けてきた。
「すみません。ちょっと5分だけ話を聞いてもらえますか?」
内地の駅でそんな風に話しかけられたら絶対に無視しなさいと言われた台詞だ。
ずいぶんストレートに声を掛けてくるな〜と驚きつつも、私は話を聞くことにした。「え? あ、どうぞ」。
「最近彼女に◯◯って理由で振られたんですよ……。」とその男性はすぐに話し出す。
やっぱりこういうお酒の席で語りたいのは恋愛話だよね。
マスターとしてカウンターに立っている夫と、お客さんの振りして飲んでいる私と、話を聞いてほしい男性でしばしの恋愛話。
最近振られたばかりだというので落ち込んでるのかと思いきや、昨日、別の女性にも「もう家に来ないで」と言われたという。2人に振られてしまったようだ。別れた彼女以外に別の女性がいたんだ、というツッコミと、元気そうで何よりだという思いとで、苦笑いするしかない。恋愛相談ではなく、聞いてほしい恋の話って感じ。
この男性、私は30代半ばだと思っていたが、ちゃんと年齢を聞いてみると25歳だという。25歳⁈ それにしては覇気がないというか、若々しさが足りない。見た目はイケメン。色黒で天パーで口髭。バックパッカーのような雰囲気がある。しかし話し始めると、頼りなさが全面に現れる。へなちょこ感が満載なのだ。振られた原因はその頼りなさじゃないのかい?
しかし、35歳だと思って聞いていた話も、25歳だと思えば可愛く思える。いろいろ頑張れ25歳。命短し恋せよ青年! である。

