ある日、ハブ酒が30杯も売れた。こんなに出るのは、半年に一度あるかないかの珍事だ。1杯も出ない日なんてザラなので、尚更だ。
ひとりが飲んでいるのを見て、隣の人が頼む。それを見て、また隣の人が頼む。それに団体さんが加わる。愛想の良い若者に、先輩方がハブ酒を奢る。そんな連鎖が続いて、気づけば30杯になっていた。
ハブ酒で場が少し浮つく。笑い声が増えて、なんとなく帰りそびれて、結果、時間が延びる。なんて都合のいい流れだろう。
ショットグラスが足りなくなるんじゃないかと、急いで洗う私。今夜に限ってワンオペだ。
うちはもともと薄利の店で、飲み放題だけでは心もとない。何かもう一品、ついでに頼んでもらえるものが欲しいと、ずっと思っていた。
おつまみでも、テキーラでもいい。でも、この日の30杯を見て、思った。
「これ、押せばいけるんじゃないか」
今どきのAIを使って、ハブ酒をすすめるポスターを作ってみた。入り口の正面、目線の高さ。ソファーの前。ついでにトイレにも貼ってみる。
あの連鎖を、自然な流れを、ポスターを使って再現しようとしている。
しかもAIで。
果たしてあの日の30杯が、つくれるものなのか。ちょっと試している。



