人の記憶とは曖昧なもので、久しぶりに来店したお客さんによく「あれ? カラオケのモニター増えた?」とか、「奥のボックス席、こんな配置だった?」とか、「あの絵は前からあった?」など、似たような質問をされる。モニターはオープン当初から3台だし、ボックスの配置も変わってない。壁に掛かっている絵は2年くらい前からありますよ。久しぶりの来店といっても、数ヶ月から長くて半年足らずなのに案外覚えていないようだ。
だいたい、いつもカウンターに座っていると奥のボックス席のことなんて見ていないと思うので、それは仕方のないことだと思うけど、カラオケのモニターのことはカラオケ好きなら歌いながら見てるはずなのにね。
ある日、週に1度は飲みに来てくれるA氏が「あれ? ママ髪染めた?」と聞いてきた。最初に染めてもう半年は経ち、プリン頭を経て染め直しまでしたのに今ごろ気付くの? と何だかがっかりしたけど、男性はあんまり細かい変化にすぐ気が付くより、ちょっぴり疎いくらいがいいかも知れない。
私の知り合いに、美容師さんは必ず男性美容師を指名するって人がいるけど、それは女性だとメイクやファッションを細かくチェックされてる気がして落ち着かないからだそうだ。うん、その気持ちよく分かる。
店内のことや髪型、メイクのことには疎いお客さん達なのに、なぜかちょっと太っただけで指摘してくる人がたまにいる。お陰で気を抜いて太ってもまたダイエットを始めることになり、私は常に三日坊主のダイエットを繰り返している。
「最近ちょっと太ったでしょ」と指摘する男性は、どちらかというとモテないだろうな~と思うお客さんで、それを側で聞こえない振りをしてくれるのは、女心を解っている紳士な方。思ったことをすぐ口にするのは決して長所ではないのだ。でも、まぁそのお陰で体重増加が加速しないで済んでいるんだから皮肉だな。