K氏は私より2歳下の40歳。バツイチ独身で彼女もいないらしい。いつも会社の仲間と飲みに来てくれて、独り身の淋しさをこぼしていた。そんな彼がある日、女性を伴ってやって来た。
K氏のお連れの女性は、来店し私の顔を見るなり「あっ! 知ってる」と、とても驚いた様子だった。はて、どこかで会ったかしら? 私も女性に見覚えがあるような気もしたが、とりあえずはおしぼりを出し、お酒を選んでもらって水割りを作る。
しばらくしてやっと仕事が落ち着き話しをすると、この女性(Nちゃん)どうやら私と同じ町の出身で、中学の時の後輩らしい。妹の同級生なんだそうだ。K氏とも同じ歳だ。
「都さんに憧れて、いつも見ていたんですよ」なんて照れるじゃない。でも、なんとなく腑に落ちない感じでいたら思い出した。Nちゃんの息子と、私の息子は同じ保育園に通っていたじゃないか! 送り迎えで会釈程度の挨拶はよくしてて、私が「なんて可愛らしいお母さんなんだろう」と密かに思っていた人だった。うん、見れば見るほど思い出してきた。小顔で美人で細くて、なんと言えばいいのか「可愛い」じゃなくて「可愛らしい」のだ。
いや、まさかあのお母さんが中学の後輩だとは知らなかった。そしてこんな風な再会があるとは。Nちゃんも今は離婚してしまい独身となっていて、ひょんなことからK氏と出会いお付き合いが始まったそう。そして連れて来られたカラオケバーが私のお店。こういう仕事をしていると度々思うけど、いやー、世の中は狭い。
保育園の玄関で、大人しげに会釈をし合ったあの可愛らしいお母さんが、今夜は私のお店のカウンターで彼氏とイチャついている。ハイボールを飲んでいる。15年前のあの頃には全く想像も出来ない今日があるんだな~。