現在の私を知っている人は信じないかも知れないけど、これでも私は、ラウンジでホステスをしていた頃は「盛り上げ役」だった。ママに、「あのグループはつまんなそうにしてるから、ちょっと行って盛り上げて来て!」と言われては行って賑やかす、なんてことが日常だった。マネージャーには「君は団体さんが来ると分かった時点で飲むペースが早くなるよね」と指摘された。元々好きではない、今では全く飲むことがなくなった泡盛をあおり、自分を鼓舞しテンションを上げるのに、酔っ払ってしまうのは良い手段だった。
その後、接客がメインのラウンジとは異なり、カラオケがメインのバーを始めたので「盛り上げ役」は必要なくなった。好きではない泡盛を無理して飲むこともしなくてよくなった。
特別人見知りな方ではないと思うけど、それでもやっぱり初めて会う人と話をする時は多少なりとも緊張する。緊張しつつもお酒を作りながら話しかけ、相手の反応を見ながらもっと声をかけるべきか、それとも放っておいてほしいタイプかを探っていく。先日も、初めて来店されたお客さんと緊張のひと時を過ごした。
「初めて来たけど、いいかね〜」
「どうぞどうぞ、カウンターへお座りください」
飲み放題の数種類のお酒の中から好きなのを選んでもらい、私が水割りを作りながらお客さんのタイプを探る。
私の緊張はドアの開く音と共に始まる。平常時が0だとしたら、ドアが開くと3になり、馴染みのお客さんだと2で落ち着く。団体さんだと4に上がり、一見さんやまだ数回しか来店したことのないお客さんの場合は6ぐらいかな? ずっと前に、物凄く体格のいいロシア人5人が来店した時は、きっと8とか9まで上がっていたと思うけど、それは本当に稀なことだ。緊張レベルがいくつに上がっても、よっぽど気難しそうなお客さん相手でもない限り、20分もすれば3まで下がって安定する。無理にテンションを上げずにマイペースで働ける今の環境に感謝。