G氏へ届け

 このエッセイが掲載されているのがナイトの求人なので、読者も夜働く女性ばかりなのかと思っていたら、意外と男性も読んでいるようだ。今まで何度か、男性のお客さんから「エッセイ書いてるんだね。読んだよ〜」と誌面の写真付きのメッセージが送られてきたことがある。いつもお客さんをネタにして書いているので本当は知られたくなかったけど、それでもやっぱり、読んでくれている人がいるんだと実感できるのは嬉しい。

 私のお店のお客さんがエッセイを見つけて読んだのとは反対に、エッセイを読んだ人がお客さんになった場合もある。G氏もその1人だ。

 G氏は、エッセイの内容もさることながら、店名の『woman』が気になったらしい。「そんな生意気な店名を付けるなんて、どんなママさんだろう」と思ったそうだ。womanは、生意気な店名なのか?

 G氏がエッセイの片隅に記してある私のお店の番号に電話して「飲みに行ってみよう」と思っているちょうどその頃、お店の電話は調子が悪く、呼び出しベルは鳴るけど受話器を取ると切れてしまう状態だった。掛けても掛けてもブチブチ切れてしまう電話を、G氏は故意に切られたと思いますます生意気さを感じ、「行かねばならぬ」と意思を強くしたいう。

 そうやって、切れてしまう電話に挫けずに飲みに来てくれたお陰で、G氏は私のお店の常連さんになってくれた。あの、初めての出会いから何年経っただろうか。

 去年の秋を最後に、G氏はぱたりとお店に来なくなった。ほぼ毎週末来ていたのが途絶え、最初は気にしていなかったが、2ヵ月近く経った時にさすがに心配になりメッセージを送ってみた。

「長いことお顔見てませんが、お元気ですか?」

 返信はなかった。

 つい先日、G氏の古い友人M氏が久しぶりに来店して、その時に初めてG氏が3月に亡くなっていたことを聞いた。誰にも内緒でずっと闘病していたらしい。最後に何を話したっけ? 覚えていたかったな〜。

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