7席しかないカウンターで、常連さんそれぞれの座る席はだいたい決まっている。O氏は入り口に近い端っこ、A氏は奥の端っこというふうに端っこの席を好むお客さんは多い。
少なくともどちらか片方だけは他人と接しないでいられる端っこの席は私も好きなので、お客さんの気持ちはよく分かる。同じ意味で飛行機も窓側が好きだけど、私的なアンケートの結果、飛行機は案外通路側も人気が高いようで、一概にはいえないようだ。
私のお店の話に戻ると、ガラガラのカウンターの真ん中辺りにポンと座るお客さんもいる。後からお客さんが2組も来たら挟まれる形になるのにそれを気にしない質なのか、端っこはせせこましくて嫌いなのか、やはり席の好みは人それぞれなんだな。
何かで、いつも同じ席に座るのは思考的にも視覚的にも刺激が減るので、脳の活性化のためには違う席に座る方がいいというような文章を読んだことがある。なので私は居酒屋などでトイレに行くたびに違う個室を使うようにしているけど、これは大して能への刺激にはなっていない気がする。
前述の端っこ好きのA氏は、いつも毎週土曜日に同じ席で飲んでいたけど、ある日女友達を2人連れて、初めて奥のセルフバーに座った。その席は、いつものカウンター席とは料金もシステムも景色も違う。普段カウンター席で泡盛の水割りを飲んでいるA氏が、セルフ席ではブルーハワイを飲んでいた。
豆腐餻やハブ酒など、新しいメニューが入ると必ず試してくれる、何かにつけてチャレンジ精神の旺盛なA氏にはきっと、セルフバーは思考的にも視覚的にも刺激がいっぱいあったんじゃないかな。