つい最近から、金曜日と土曜日の遅い時間だけ夫にお店に立ってもらうことにした。私と入れ替わりで、AM1時からAM5時までの店番だ。
夫はBARをやっていた経験もあるし、人当たりも良いので心配ないだろう。ただ、職業上、私は独身ということにしているので、夫はただの“男性スタッフ”ということで通している。今まではお客さんのふりをして、しょっちゅうカウンターやセルフ席で飲んでいたのが、今後はカウンター内に立って接客だ。
夫の出勤初日、奇跡みたいな再会があった。
その日、AM3時にふらりと1人で入って来た一見さん。カウンター席に座った。歳の頃は50歳の夫と同じくらいの男性で、乾杯をしてお互い出身は那覇だと話をしていると、突然そのお客さんが、「なんか、どこかで見たことがあるな〜」と言い出したという。
夫は10代で内地に行って、30年そこで過ごした。なので会ったことがあるというと、10代までか、ここ数年ということになる。夫はそのお客さんに全く見覚えがなかったので、相手の勘違いだろうと思っていたら「◯◯教会に通っていなかった?」と、あまりにも懐かしい教会名が出てきたそうだ。夫がその教会に通っていたのは、幼稚園前の4.5歳くらいだそうで、もう45年も前のことだ。
そのお客さんの名前はT。夫はその名前にも聞き覚えはなかったが、Tさんは夫の名前を聞いて「やっぱりそうだ!」と記憶にあったという。Tさんが1つ歳上ということで、5.6歳の頃のことを覚えているなんて、驚くべき記憶力。Tさん曰く、夫は「顔が全然変わっていない」そうだ。
「そんな小さい頃から顔が変わっていないわけないし、変わっててほしいよな」と、夫は出勤初日の奇跡的な再会に、驚くよりもちょっと不満気だった。
Tさんはその後も飲みに来てくれるようになり、夫は出勤初日から良いスタートが切れたようだ。