私のお店は今年で15周年を迎える。「この店は何年になるの?」とお客さんに聞かれた時に、15年だとそろそろ箔がつく頃なのか「凄いね〜」と言ってもらえるようになってきた。
15年も経つと、常連さんの状況も変わっていく。部下を連れてしょっちゅう来てくれていたK城さんは、会社を定年退職して私のお店からは足が遠のいてしまったが、今はK城さんの部下が、そのまた部下を連れて来るようになった。
いつも団体で来店し、遅くまで飲んでいた独身だったO城君は、今や1児の父親となり、飲み会の席もひと足先に帰るようになった。
いつの間にか来なくなってしまったお客さんもいる。生活環境が変わったのか、健康状態が悪くなったのか、別の新しい行き付けを見つけたのか、そういえば長いこと来てないな〜という感じで去っていくお客さんもいれば、新たな常連さんが増えたりするのがこの商売なのだろう。
残念ながら、亡くなってしまったお客さんも何人かいる。その訃報は、Facebookで知ったり、一緒に来ていた友達や恋人から知らされたりさまざまだけど、何度なく一緒に飲む時間を過ごしたお客さんなので、日常のふとした瞬間に思い出すことがある。
先日会社の同僚と来店したY郎さんが結婚したのは、5年くらい前だろうか。飲む機会は結婚前に比べてだいぶ減ったようだけど、それでもたまには私のお店に顔を出してくれる。Y郎さんには、仕事帰りに買い物ミッションがある。奥さんからLINEで買い物リストが送られてくるのだ。
「そろそろ帰ろうかな。途中でスーパー寄らないといけないし」と言って見せてくれたLINEには、トマト、ブロッコリー、牛乳などが書かれていた。飲んだ帰りにタクシーでスーパーに寄り道して食料品を買って帰るY郎さん。昔はなかなか尖った印象だったのに、今では良き夫、良き父親になったようだ。時の流れをしみじみ感じた夜でした。