私は冬より断然夏のほうが好きだけど、暖かくなってくると、それはゴキの出没する季節でもある。恐怖のゴキだ。
私のお店には殺虫装置があって、営業時間外の昼間の数時間、その装置が殺虫成分を散布する。そして、その成果として、出勤して来た時にゴキの死骸が床に転がってるというわけだ。もちろん毎日ではない。冬場は月に１度あるかないかくらいなのが、夏場になると週に１度くらいの頻度に跳ね上がる。時には２匹も転がっていたりする。私が出勤してまずすることは、ビビりながらゴキの死骸の有無を確認することだ。
殺虫装置のお陰で、生きているゴキとスプレー缶を片手に戦わなくてもいいので本当にとても助かっているけど、問題はその死骸だ。
高所恐怖症の人がバンジージャンプが無理なように、ゴキ恐怖症（？）の私に、その死骸の処理は本当に無理な話で、以前から何度もホウキとチリトリで取ろうとしたり、ティッシュを何枚も重ねてチャレンジしてみたけど、どんな頑張っても１メートル以上は近づけない。ちゃんと見ることすらままならない。どうしてもどうしても出来ない。
どこにいても電話１本でゴキを片付けに駆けつけてくれた息子も、この春から内地の大学に進学し、私はこれからの夏をどう乗り切ろうか。注文のタイミングで酒屋さんにお願いすることも今まで何度もあったけど、やはり申し訳ない気持ちはいつもある。あぁ、夏は好きなのに、ゴキのことを考えると気が重い。
さらに嫌なのは夜道だ。ゴキは人間が怖いのか怖くないのか、なぜかわざわざ歩いている私の前を横切って行く。間違って踏んでしまいそうなくらいに近くをだ。もう本当に勘弁してほしい。つい先日は、ゴキが私の前を横切るのと、後ろから人が私を追い越すのが重なって、妙な小さな悲鳴を上げてしまった。あの人、びっくりしただろうな。ごめんなさい。
