私のお店は2時間飲み放題のシステムで、制限時間の5分から10分くらい前になると、「そろそろお時間です」とお客さんに伝える。
カラオケが好きなお客さんなら、「じゃ、ラスト1曲ね」と言ってデンモクをピコピコし始める。そうでないお客さんは、グラスのお酒をサラッと飲み干してお会計をする。ほとんどのお客さんはお店のシステムを理解して、時間内にスマートに帰る。
延長という手もある。「もうちょっと飲みたいから延長お願い」と、常連さんはそこら辺もスマートだ。システムがよく分からないお客さんは、「まだ飲みたい場合は延長ってのもあるの?」と聞かれるので説明する。
「もう2時間も経つの? 楽しい時間はあっという間だね〜」と言われたりすると、半分お世辞でも嬉しいものだ。そういう時間はたいてい私も楽しい。
本当に極々たまーにだけど、時間を知らせる私に、「じゃ、俺にもう帰れってことか?」と突っかかってくるお客さんがいる。「まぁ、一応そういう事です」と内心は思っているけど、さすがにそこまでストレートには言えないので、「だって〜、もう時間なんだも〜ん」と、文字にするとちょっとキモいけど、実際は軽くすっとぼけた感じでサラッと言い流し(実際もキモかったりして)、「お会計しますか? それとも延長します?」と、あえてドライに問いかける。
お客さんに「そろそろお時間です」と声掛けすることに、そりゃもちろん最初は抵抗があった。今だって、声掛けのタイミングを計るのに苦心しているのは、それこそ上記のお客さんの台詞の通り「帰れってことか?」というふうに思われるのも、ある程度理解できるからである。かと言って、無断で延長するのも、延長料金をサービスするのも、どちらも無しなので言わざるを得ない。
私は今夜も「そろそろお時間です」のタイミングを計りつつビールを飲んでいる。