家で私の好きなバンドの動画を観ていたら、そのバンドの、コピーバンドの動画に行き着いた。しっかりとした舞台に本格的な演奏と、ダンサーもいて、なかなか気合いの入ったコピーバンドだった。年齢は私と同じアラフォー、アラフィフくらいだろう。福岡を拠点に活動しているようだ。
カメラが観客席を映した。野外でのフェスのようだ。観客の年齢はバンドメンバーよりだいぶ若い。何百人もの大勢の人がバンドの演奏をノリノリで聴いている。こんなに観客がいるなんて、コピーと言えども地元では有名なバンドなのかも知れない。
コピーのボーカルが、本物のボーカルよりだいぶぽっちゃりしているのに本人になり切っている感じが「ちょっと気に入らない」と感じたけど、ダンサーの中に1人、個性の強い人がいたので、そのダンサーに注目して何曲も聴いているうちに、だんだん楽しくなってきた。
本物よりぽっちゃりしているボーカルも、歌い方は本物に寄せてはいるけどモノマネではないのが良いし、トークも上手だし、なかなか憎めないキャラだ。けっこう好きかも。
あれ? と途中で気がついた。右端でトランペットを吹いている人に見覚えがあるぞ。
5.6年前まで定期的に私のお店に来てくれていたN氏だ。有名な外資系企業にお勤めで、沖縄の会社との集まりの2次会に、いつも団体さんで来てくれた。N氏は会計係のような立場だったので、周りがテンション高く飲んだり歌ったりしていても常に冷静で、ニコニコと見守っている感じで過ごす、静かな人だった。
そんなN氏がフェスの舞台で、コピーバンドのメンバーの一員としてノリノリでトランペットを吹いている。
動画の映像も6年前の物だったので、ちょうど私のお店に来ていた頃だ。どんなに常連さんだとしても、私はお客さんの一面しか知らないという事は意識していたけど、それにしてもN氏のギャップは素晴らしいな。
「沖縄担当から外れることになったので……」と、N氏が初めて1人で来店してくれたのが、最後の挨拶の時だった。いつも団体さんなので、わざわざ1人で来てくれたことがとても嬉しかったのを思い出した。
舞台の終わりのメンバー紹介で、「トランペットの◯◯」と名前を聞いて、やっぱりN氏なんだと確認した。それまでは心のどこかで半信半疑だったのだ。いや〜、N氏のギャップは素晴らしい。



