違う一面

 数ヶ月前から私のお店によく来てくれるようになったM氏。背が高くてすごく細身で、お笑いのアンガールズの田中をイケメンにした感じだ。見た目だけじゃなく雰囲気とか動きも似ていて、私がM氏の水割りを作るたびにペコリとちょっと斜めに頭を下げる。M氏は腰が低いのだ。

 話をしていても全然威張る人ではなく、いつでも常にちょっと控えめなM氏。その日は他に誰もお客さんがいなくて、私がカラオケを勧めてみると「そうだね。僕ばあまり人とカラオケの好みが合わないから、誰もいない今が歌うチャンスだ」と、曲を選び始めた。今まで一度も歌ったことがなかったけど、お決まり的な気持ちでカラオケを勧めてみたら、まさか歌うなんて。意外だわ。

 曲を選びながら、M氏は語る。

「ロックが好きで、シャウトして歌いたいんだよね〜」「たまに会社の人たちとカラオケを歌うような場面では、みんなが知っているX JAPANとかを歌うけど、本当に好きなバンドはあんまり有名じゃないから人前で歌うのは遠慮してしまうんだ」等々。

 ロックとかシャウトとかX JAPANとか、どれもM氏のイメージとはかけ離れている気がするんだけど、もしかして歌う時は変身するタイプ?

 いざカラオケが始まると、予想通りというか何というか、M氏は激変する。マイクを祈るように両手で持ち、椅子に座ったままではあるが、頭をフリフリ高音でシャウトする。テレビでしか見たことないような激しい歌い方だけど、軽々と高い声が出てるし、シャウトもただ叫んでるだけじゃなくて、物凄く上手い。

「Mさん、凄い!」パチパチと拍手する私に、歌い終わったM氏はペコリと斜めに頭を下げる。あら、元の大人しいM氏に戻ったようだ。見事な切り替えだ。

 それから合計3曲歌ったけど、その度に「歌う激しいM氏」と、間奏や選曲の時の「普段の大人しいM氏」がコロコロ切り替わって、まるで何かの冗談みたいだった。

 確かにあんなに激しい歌い方なら歌うシーンを選ぶだろうなぁとは思うけど、面白いし上手いし、また聞きたいな。

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