私のお店の一番の常連であるOさんは、ほぼ毎日来てくれるので、他のお客さんの間でもけっこう知られた存在だ。
Oさんは自分から誰かに話しかけるタイプではないけど、どこか気さくな雰囲気がある年配の男性で、他のお客さんから話しかけられることは多い。
先日、「去年の夏以来なので、ちょうど1年ぶりに来ました」とニコニコしながら話す、ショートカットで30歳前後の、活発な雰囲気の女性が来店した。一緒に来ていた女性のことを「友達はこのお店、初めてなんですよ〜」と紹介してくれた。
そのとき、カウンターには、いつものように1人で来ていたOさんが座っていて、ショートカットの女性がOさんに話しかけた。どうやら1年前に来店したときにもOさんがカウンターにいたらしく、そのとき会話が盛り上がって、一緒に写真まで撮ったのだという。その写真も見せてくれた。
Oさん本人はそのときのことを全く覚えていなかったが、写真にはショートカットの女性とOさんが満面の笑みで写っている。そしてなにより可笑しいのが、Oさんは1年前も今日も、まったく同じかりゆしウエアを着ていたことだ。なんという偶然。
「前回お会いしたときに92歳とお聞きして、ものすごく驚いたんですよ。あまりにお元気で。全然92歳には見えないです」と女性が言うと「そうそう、あのときは92歳だったから、今はもう93歳になったよ」とOさん。
実はOさん、10年以上も前から92歳と言い続けているのだが、今回初めて「93歳」になった。でも私は知っている。――実際は60代である。
歳が離れすぎていると、年齢って、かえって分からなくなるものだ。
Oさんが帰った後、ショートカットの女性が私に「Oさんって、93歳なのにすごく元気ですよね〜」と話しかけてきた。私は笑って頷いて、本当の年齢のことは、言わないでおくことにした。



